譲歩2

そんな事を、鬱々と考えながら、暑さでふと目覚めると、僕は、本当に風邪をひいてしまって、壊れたブリキのロボットのように、仰向けで、動かなくなってしまっていた。

これで、タケルと会わない理由が出来た、と安堵する余裕もないほどに、体調は悪く、一人で立ち上がる事すら、出来なくなっていた。

外は真っ昼間で、母親が夜帰ってくるまでには、相当時間がある。滅多に風邪などひかないので、会社の連絡先も知らない。

僕は、首もとにあった携帯を、重い腕を伸ばして、拾い考えた。しかし、友人は学校だし、元々、仮病で休んでいるので、何を言ったら良いかわからなかった。

意識が朦朧としていると、タケルの事が、ふつふつと出てきて、半ば考えるなと、戒めのように、思い続けて出てきて、というのを繰り返すうちに、僕は、とても遠い、朝倉さんの事を考えた。

初めて、委員会で顔を合わせた時から、僕は、彼女の瞳に、目を奪われてしまっていた。ただ、側にいるだけで幸せだった。だけど今、隣には、別の人間がいる。

電話帳を開くと、1ページ目に、朝倉の文字が光っている。最初の自己紹介で、緊張で何も話せなかった僕に、「連絡先、交換しよ。」と、声をかけてくれたのは、彼女からの、側からだった。その優しさに、無性に包まれたかった。

僕は、少し考える事をやめた。そして、彼女に電話をかけた。